婚約破棄寸前の不遇令嬢はスパイとなって隣国に行く〜いつのまにか王太子殿下に愛されていました〜
わたしはレイに会場の隣にある屋敷に連れて行かれて、応接室で休ませてくれた。違法競売の見張りをするためにレイモンド王太子殿下が買い上げたらしい。
「っっ…………」
まだ震えが止まらなかった。カップを持つ手がプルプルと中の液体を揺らしていた。
嫌でもあの光景が離れない。ねっとりした赤い液体の残像が自身の双眸に膜を張ったままだ。
レイはそんなわたしの無様な姿をしばらく眺めてから、
「なんで来たんだ? 兵士の仕事は会場周辺の警護だ。無断で持ち場を離れるのは命令違反だぞ」
わたしは今にも泣きそうな顔で彼を見上げる。
「だっ……だって…………。凄い爆発音がしたから……レイが心配で…………」
彼は目を見張って、
「僕のために?」
わたしはゆっくりと頷く。すると、彼はふっと柔らかく笑った。