婚約破棄寸前の不遇令嬢はスパイとなって隣国に行く〜いつのまにか王太子殿下に愛されていました〜



 そうこうしている内にローラント王国の王宮に着いた。荘厳な宮殿が馬車を迎える。豪奢だけど洗練された雰囲気の王宮は、アングラレス王国との国力の差を見せつけられているようだった。

 ついに今夜、わたしはレイモンド王太子殿下にお会いすることができる。やっとここまで辿り着いた。

 それまで鉱山やら軍隊やらで大変だったから、わたしは王太子殿下にお目にかかる前から既に達成感を味わっていた。
 ここで殿下と顔見知りになって親しくなれれば、アンドレイ様の求める情報を得られるわけだ。

 彼の犯罪疑惑などはひとまず置いておいて、今は戦争を回避するために情報を得るのが最優先だ。
 ……それが国民のためだと思うから。彼の意図は分からないけど、わたしの国を想う心は変わらないわ。

 問題はレイモンド王太子殿下に気に入られるか、よね。こればかりは正直自信がない。

 聞いた話によると、王太子殿下は競売会場に突撃した日、事後処理はそこそこにお気に入りの若い見習い騎士を執務室に連れて行って長い時間二人きりで過ごしていたようだ。しかも王太子殿下専用の馬車で、その騎士を家まで送り届けたんですって。

 まぁ、ただの噂だけど、こう似通った噂ばかりだとね……さすがに不安になるわ。

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