婚約破棄寸前の不遇令嬢はスパイとなって隣国に行く〜いつのまにか王太子殿下に愛されていました〜


 レイは微かに眉を動かしてから、

「それで……その……そのドレスは君の趣味なのか?」と、遠慮がちに言った。

「それ、伯爵と侍女からも言われたわ」わたしは苦笑いをする。「婚約者がこういうデザインが好きなのよ。わたしは特になにも考えずに侯爵家が用意したドレスを着ているだけ。――それで、わたしにはもっと他のドレスのほうが似合うって言いたんでしょう?」

「お、おう……」

 レイは思っていたことを的中させられたからなのか、たじろいだ。

「お見通しなのよ」

「参ったな……。その、ここにいる間くらいは好きな格好をしたらどうだ? 王子も見ていないだろ」

「それも二人から言われたわ。次の休日にでも買い物に行くつもりよ」

「そうか。余計な口出しをして悪かったな。無礼だった。お節介だが、ドレスはレディーの鎧だから一番魅力的に見えるものを身に纏ったほうがいい。それに、なんだか今の君を見ていると色んなものに我慢しているように感じて、な」

「我慢……?」

 わたしは首を傾げる。レイの言うことがよく分からなかった。
 我慢? わたし、我慢しているのかしら? なにを? なにに?

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