婚約破棄寸前の不遇令嬢はスパイとなって隣国に行く〜いつのまにか王太子殿下に愛されていました〜


 レイは戸惑いを隠せないわたしの様子を見てふっと微笑んでから、

「今日のドレスは君に凄く似合っていると思う。君は本当はどんなドレスが好きなんだ?」

「えっ?」不意を突いた質問に目を丸くしながらも「そ、そうね。やっぱり今日みたいにシャープで大人っぽいデザインが好きだわ。装飾は最低限でシンプルに、長身を活かしたスマートなドレスがいいわね」

「じゃあ、好きな色は? いつも着ていたパステルカラー?」

「いいえ。わたしは……赤が好き。太陽のように熱く燃える情熱的な真っ赤な色が」

「真っ赤でシンプルなドレスか……。それを着て君はなにをしたい?」

「そうね……まずは舞踏会で踊りたいわ。いつもの淑女のお上品ぶった退屈なダンスじゃなくて、本能のままに身体を動かすような激しいダンスを」

「それから? 他にやりたいことは?」

「それから、貴族や王子の婚約者なんて重苦しいものは脱ぎ捨てて街に遊び歩きたいわ。屋台で買った食べ物をその場でぱくついたり、カフェで議論したり、人気の芝居小屋で風刺的な演劇を立ち見したり、のんびりと川沿いを散歩したり」

「行きたいのは街だけ?」

「ヴェルと一緒に草原を走り回ったり、森を散策したり、ドレスの汚れなんて気にしないで彼と思い切り遊びたいわ」
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