婚約破棄寸前の不遇令嬢はスパイとなって隣国に行く〜いつのまにか王太子殿下に愛されていました〜

35 一時帰国

 もうすぐアングラレス王国の建国祭が行われる。
 わたしは王子の婚約者として式典の参加が義務付けられているので、一時帰国することになった。

 そして、今年の建国祭は節目の年なのもあって、隣国ローラントの王太子であるレイモンド・ローラント王子も来賓としてやって来ることになったのだ。

 アンドレイ様の提案だ。二国間の友好を願って、記念すべき年に是非参加して欲しい……ですって。
 彼はわたしが王太子を籠絡したと思い込んでいるようだった。

 報告書にはレイから提供してもらったローラント軍のフェイク情報を添えて送った。
 手紙にははっきりと籠絡したとは書かなかったけど、「王太子殿下から直々に教えてもらった」と伝えておいたので、彼は籠絡に成功して王太子とわたしがねんごろになったと錯覚することだろう。

 スカイヨン伯爵から教えてもらったのだ。後々、証拠として挙げられないように、第三者から見てあやふやで分かりづらいような内容にするように、と。事情を知っている受け取った本人にしか意味を理解されないように……慎重に筆を進めた。
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