婚約破棄寸前の不遇令嬢はスパイとなって隣国に行く〜いつのまにか王太子殿下に愛されていました〜


「…………っ」

「ア、アンドレイ! どうするの!? あたし、牢屋行きは嫌よ。なんとかして!」

 ナージャ子爵令嬢が彼の腕を掴んで懇願するように問いかける。静まり返ったホールに彼女の鈴を転がす声はよく鳴って、その一言で二人が親密な関係だと感じさせられた。


 わたしは追い打ちを掛けるように二人の関係性を暴露する。

「殿下……いくら恋人を側に置きたいからって、王族が不正を働くのはいけませんよ」

 眼前の無様な二人を、くすりと嘲笑った。
< 285 / 303 >

この作品をシェア

pagetop