婚約破棄寸前の不遇令嬢はスパイとなって隣国に行く〜いつのまにか王太子殿下に愛されていました〜

 わたしが黙っているのを証明不可能だと思ったのか、アンドレイ様は勝ち誇ったようにニヤリと笑う。

「出来ないのだろう!? 私はお前たちと違って疚しいことなどないのだからな! 王子の側近が良い物を身に着けるのは当然のことだ! それを私自らが与えてなにが悪い? それに、平民たちの功績とやらも最終的には彼女自身が中身を確認をして実行した。だから結果は彼女のものだ! なにも問題ない!」

 彼はまたもや滅茶苦茶なことを得意げに言い出した。

 王子のあまりに身勝手で愚かな発言に国王陛下は頭を抱え、観客からは嘲笑の混じった忍び笑いや落胆のため息が聞こえてきた。この王子は駄目だ……と、諦念の混じった囁き声が重なり合う。

「殿下、わたしが沈黙していたのは、どこから話そうかと逡巡していたからなのです」わたしは静かに反撃を開始する。「お二人が利用していた宿泊所や密会場所も裏を取っていますが……もう面倒なのでいきなり恋文からいきますか」
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