婚約破棄寸前の不遇令嬢はスパイとなって隣国に行く〜いつのまにか王太子殿下に愛されていました〜
わたしは体力がなさすぎて、初めの頃は毎度のようにノルマを達成できずに、見かねた坑夫たちがこっそり手伝ってくれていた。
本当に、彼らには感謝してもしきれないわ。
……同時に、仲間というものの尊さを初めて知って、なんとも言えない温かさを覚えたわ。
「あぁ、僕はもう君の倍は掘っているけど?」と、彼はしれっと答える。
「えぇっ!?」
驚いて彼の足元を見ると、本当にわたしの倍……いえ、それ以上に砕かれた岩の山が出来ていた。
い、いつの間にこんなに仕事を進めていたのよ! さっきからずっと喋っているのに!
彼はニヤニヤと意地の悪い笑みを浮かべて、
「半分あげようか?」
「いらない!」
「遠慮するなよ」
「しつこいな! 口より手を動かせよ! 今日のノルマに間に合わないぞ!」
「え? もうすぐ今日のノルマを終えるけど。……やっぱり、半分いる?」
「いらないって言ってるだろうっ!!」
「こらっ、そこっ! 黙って仕事をしろっ!!」
監視の怒気を含んだ濁声がまたぞろ洞窟内に響き渡った。