溶けた恋

18

「きっと、梓馬さんトーコの事大切に思ってるんじゃないかな。。何か、愛を感じる。羨ましい。」

リンネは切なそうに遠くを見つめて呟いた。

クリスマスを目前に歌舞伎町も色々装飾が施された場所が増える中、リンネと冬子はトー横広場でハムスターのように丸まりながら、恋バナに花を咲かせていた。

「それにしても、やっぱ外は寒い!トーコ、今度うちに遊びにきなよ…?
あ、そろそろ仕事の時間だから、またね!」

直していた化粧を終え鏡をパッと閉じると、リンネは颯爽と職場まで向かっていった。

リンネは正式に退学が決まり、メイド系のコンカフェで仕事を決め、彼氏のせつなと住む部屋も見つけていた。


皆それぞれ前進していて、冬子は一人取り残された気持ちになっていた。

おまけに、冬子は母親への罪悪感から金銭の恐喝も出来なくなり、自分の通帳から切り崩して生活していたため、そろそろ資金も尽きそうになっていた。



案件だけはやりたくないし…古株の夏樹に仕事の相談をすることにした。

ちょっと気まずいが…。


「トーコ、久しぶり!最近トー横きてた?」

「うん、いたりいなかったり色々〜。資金尽きそうなんだけど、何かいい仕事ないかなぁと思って。」

「女子ならみんな案件かなぁ、、受け子とかもあるけど、危ないよ?案件は駄目なの?普通に声かけられるでしょ。一回やっちゃえばそんな大したことないよ。割と普通のおじばっかだし。」


「案件はちょっと…」

「……梓馬さんがいるから?」
夏樹の表情が少しこわばった。

「まぁね…」

夏樹はふぅ~とため息をつくと、冬子の方をじっと見つめた。
夏樹の美しく切れ長の瞳から見つめられると、全てを見透かされているみたいで冬子はたじろいだ。


「トーコ、オレも前、気持ち伝えた気でいたんだけど、それからずっと無視じゃん。まだ梓馬さんに夢中?」


「うん、、」


「そっかぁ、、でもあの人、色々彼女いるでしょ。この前のお姉さん以外にも。オレこの前みかけたもん。証拠抑えたよ。」

と言って、レイラとは別の美女とホテルに入る画像を冬子に差し出した。

梓馬がスーツ姿である事から察するに、ホスト企画の時のものだ。




「もう……、そんなの知ってる!!全部知ってる!ほっといてよ。いいじゃん、、こんなに好きになっちゃったんだもん…。」


冬子は涙をぼろぼろ流しながら夏樹に訴える。

冬子がここまで感情的になるとは想像していなかった夏樹は一瞬躊躇したが、すぐに平静を保った。


「トーコ、、オレの方みてよ。オレは、トーコの事だけ大事にするよ?」

夏樹は冬子に顔を近付け、細い指で横髪をかき分け、キスをしようとした。

「ちょっと、、やめて。」

冬子は夏樹の手を振り払い、後ずさりした。



「あんなふうに女性を裏切って傷つけてばかりの男、、オレは許せない。」

夏樹は斜め下に向かってそう漏らすと、「ちょっと気持ち整理してくる」と言って夜の闇に消えていった。


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