【コミカライズ連載中】➕SS 雲隠れ王女は冷酷皇太子の腕の中〜あなたに溺愛されても困ります!
『そうだな……。その者が帝国にとってとても重要な人物だから、とでも言おうか。たとえ見つけ出したとしても、その者を《《利用》》できぬとわかれば——処刑する』

 顔をしかめたまま、温度を感じさせない声で応じる。

 ジルベルトが抱える思いには、少しずつ変化が生じていた。
 旧シャルロワの雲隠れ王女を妃にし、彼女を慕う領民の心を得ようとした。だが。


 ——まだ王女が生存しているとすれば。
 帝国に家族を殺され国を滅ぼされたと。この俺への恨みと憎しみを募らせているだろう。
 うっかり寝首をかかれるくらいなら、見つけ出して殺してしまったほうがいい。


 マリアは身震いした。
 恐れていた答えを、恐れていたままに聞かされた。背中に悪寒が走り、みるみる顔が青ざめてゆく。

 ——これじゃ、ジルベルトに変な疑問を抱かせてしまう。
 しっかりするのよ。
 今の私はマリア、リュシエンヌではないのだから……!

 必死で言い聞かせ、心を落ち着ける。
 ジルベルトと寝台に入ってからも、心臓の鼓動がどくどくと胸を叩き続けた。


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