【コミカライズ連載中】➕SS 雲隠れ王女は冷酷皇太子の腕の中〜あなたに溺愛されても困ります!

逢瀬

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 ジルベルトは、ソファに向かおうとするマリアを抱え上げた。
「ひゃっ」驚いて声が出たのも束の間、ふわりと浮いた身体はすぐに、ソファに座ったジルベルトの膝の上で横座りの格好になる。

「マリアの顔、よく見せて」

 膝の上に揃えた手を、不意に握られる。
 反射的に走った震えを押しとどめようと、もう片方の手がマリアの肩を抱く力を強めた。
 大きな手が、強張(こわば)りをほどこうとするかのように指先をそっとあたためる。 

「限界……」

 痛みを孕んで紡がれる声。
 引き込まれるように上げた視線が青い瞳にぶつかった。
 マリアを求めて揺れる眼差しを見た途端、胸の奥がぎゅっと軋む音を立てて痛くなる。

 くい、と顎を持ち上げられれば、不意に甘やかな香りが強く(かお)る。
 かと思うと、唇を柔らかなものにふさがれていた。

 緊張も言葉も、全てが融ける。ただ、唇だけが燃えるように熱い。
 ゆっくりと唇を離したジルベルトが「まだ足りぬ」と呟いた。
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