【コミカライズ連載中】➕SS 雲隠れ王女は冷酷皇太子の腕の中〜あなたに溺愛されても困ります!
 皇太子殿下が認めた——それはあの『鍵』の事を言っているのだろう。

 事情もよく知らぬまま、大それたものを持ち続けているのには気が引けていた。あの鍵は、次に会った時ジルベルトに返すつもりでいる。

「上手にエスコートくださった殿下のお陰です……私、踊ったのなんて何年ぶりだか」

 ジルベルトを見遣ると、すぐそばで談笑を交えながら王族だか貴族だか知らぬ青年の挨拶に応じていた。

「それを仰るのなら……」
 令嬢のなかの一人がこそりと耳打ちをしてくる。

「皇太子殿下だって、誰かと踊ったのなんて数年ぶりですわよ?」
「殿下が踊っておられるのを拝見したの、わたくしは今日が初めてですわ」

「ほら、数年前にガルヴァリエ公爵令嬢とのご婚約が持ち上がった、あの舞踏会で。殿下は公爵令嬢と踊っていらしたわ」

「そのくらい殿下がワルツを踊るのは珍しい事です!」


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