【コミカライズ連載中】➕SS 雲隠れ王女は冷酷皇太子の腕の中〜あなたに溺愛されても困ります!
最終話
 * 


 雲間から姿を現した太陽が、広大な帝都に光のカーテンを降ろしていく。
 白昼の街は輝きに包まれ、人々は眩しいほどの陽光に目を眇めながら空を仰いだ。

 ジルベルトと馬車に揺られながら、マリアは車窓の移り行く景色を物珍しげに眺めていた。

 ガルヴァリエ侯爵家への往路は気持ちがそぞろで、曇り空の憂鬱も手伝って灰色一色だった窓の外。
 ミラルダと互いの想いが通じ合った今となれば、見える風景の色も違ってくる。陽の光を取り戻した街は色鮮やかでとても美しかった。

 帝国の紋章を掲げた馬車は、帝都を縦横に走る街道を皇城に向かってまっすぐに進んで行く。

 四頭立ての豪奢な馬車と護衛の者たちの立派な騎馬は、道行く人々の視線を釘付けにした。感嘆を漏らす者もいれば、立ち止まって礼を取る者もいる。
 にこやかに手を振る子供たちの無邪気さに思わず指先を上げ、笑顔を向けて挨拶を返した。

「ジルベルト、見て……っ。可愛いわね」

 返事が無いのを案じて隣に目をやると、組んだ長い足の上に片肘をついたジルベルトは遠い目でどこか一点を見つめている。


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