【コミカライズ連載中】➕SS 雲隠れ王女は冷酷皇太子の腕の中〜あなたに溺愛されても困ります!

「ジルベルト……?? どうしたの、こんなに聞き分けが悪いなんて」

 仔猫——『ジルベルト』は尚《なお》も爪を立ててマリアの胸にしがみつこうとする。
 夕立のように雨足を強める雨が、容赦なくマリアと仔猫に降り注いた。

「明日また来るから、穴の中で大人しくしてるのよ?」

 仔猫のか細い前足を少し強引に引き剥がし、横穴の中に敷いたタオルの上に乗せた。

 マリアも濡れそぼっている。このままでは風邪を引きそうだ。
 自分に何かあれば小さな仔猫の世話をする者がいなくなり、お腹をすかせた仔猫はひとりぼっちで寂しい思いをするだろう。

「一緒に居られなくてごめんね……ジルベルトっ」

 井戸を背にして振り返れば。
 草に隠れた横穴から身を乗り出すように顔を出した仔猫が、酷く不安そうな目をしてマリアをじっと見つめていた。


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