花婿が差し替えられました
「先日は本当にごめんなさいね、アリス」
王太子妃ゾフィーは、改めて先日のルイーズ王女の不調法をアリスに謝罪した。
今日アリスはゾフィーに誘われ、温室の花々を愛でながらお茶を楽しんでいる。
アリスを可愛がっているゾフィーは、こうしてちょくちょく彼女をお茶に付き合わせるのだ。
仕事と関係なくお茶に誘ってくれるゾフィーとの時間は、アリスにとっても良い息抜きになっている。

「クロードはあの子のお気に入りだから、妻の貴女が気に入らないのでしょう。今だって、どこかから睨んでいるかもしれなくてよ」
ゾフィーは悪戯っぽくそう言って笑った。
全く、この人の言うことはどこまで本気なんだか…とアリスも苦笑した。
でもクロードが本当に想っているのはルイーズ王女の方なのだから、妻だからという理由だけで嫌われるのはなんだか納得がいかない。
「なるほど。もしかしたら王女殿下は、輿入れの際にクロード様がタンタルについて来ないのではと心配してらっしゃるのかもしれませんね。仮にも、既婚者ですし」
そう言ってアリスは目の前の菓子をつまんだ。
いつものことだが、王宮御用達の菓子は美味し過ぎてつまむ手が止まらない。

クロードとアリスが離縁前提であるのも、クロードのタンタル行きはほぼ決定事項であることも、おそらくルイーズは知らないのだろう。
だから心配して、妻のアリスを邪魔だと思っているのだろうか。
(そんな心配、いらないのに…)
アリスはこっそりため息をついた。
ルイーズ王女が不安に思っているなら、クロードがきちんと話して彼女の憂いを取り除いてやればよいだけのことだ。
王女が妻であるアリスに嫉妬して何か仕掛けてくるとは思えないが、まるで逆恨みのような思いを向けられるのは、正直迷惑である。
アリスはとうにクロードとの離縁を心に決めているのに。
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