花婿が差し替えられました
(まさか、死体とか…?)
アリスは近くにあった花瓶を手に持つと、足先で盛り上がっている上をつんつん突いた。
(動いた…!)
突かれた辺りがピクリと動き、ベッドの中の人間が生きているとわかる。
(でも、どういう意図かわからない…)
こんなところに閉じ込められたこと自体事件なのだ。
このベッドの中の人物がアリスの味方とはとうてい考えられない。

(逃げるしかない…)
とりあえず、起きたら厄介だから、申し訳ないけどこの人物にはさらに眠っていてもらおう。
アリスは花瓶を振り翳し、その人物の頭目掛けて振り下ろそうとした。

(…やるのよアリス!躊躇してる暇はないわ…!)
強気な女伯爵と言われてはきても、当然アリスは自分から人を傷つけたことなどない。
花瓶で頭を殴ったからと言って死ぬとは思えないが、大怪我をさせるかもしれないのだ。
躊躇しているうち、その人物が寝返りを打った。
顔が晒されて、アリスにもハッキリとわかるようになる。

(ナルシス…!)
アリスは声にならない悲鳴を上げた。
ベッドの中の人物は、クロードの兄で、かつてアリスの婚約者だったナルシスだったのだ。
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