花婿が差し替えられました
古代王国の遺物を前に、クロードは食い入るように展示を眺めた。
本当はあらゆる角度から堪能したいが、やはり人気のあるコーナーは人が多く、なかなか身動きが取れない。
(それにしても…)
クロードは今日のデートは成功だと、すっかり満足していた。
以前から騎士仲間のミハエルにアリスをデートに誘い出せと発破をかけられていたが、そんなことは出来るわけがないと思い込んでいた。
あの、美しく聡明な女性が、自分のような堅物の騎士とデートする姿が想像できなかったのだ。
だが、子犬のタロをきっかけに話す機会も増え、彼女に笑顔が増えた。
自分に対する雰囲気も柔らかくなり、来訪を喜んでくれているような素振りも見える。
それに、先日の夜会でナルシスと対峙する彼女を見て、激しく思ったのだ。
こいつにだけは、彼女を渡したくないと。
彼女は俺の妻なのだ、と。
今はまだ…、ではあるが。

意を決してデートに誘ってみれば、彼女はすんなりとOKしてくれた。
しかも、クロードが好きな博物館に行こうとまで提案してくれたのだ。
この後はレストランで遅い昼食をとって、ブティックで正装し、劇場に向かうことになっている。
正に、完璧なデートコースである。
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