花婿が差し替えられました

彼のいない王都

クロードがルイーズ王女の伴で離宮に行って、早一月が経つ。
その間、クロードからは何度か手紙が届き、離宮での様子などが書かれていた。

「ほらタロ。旦那様からのお手紙よ」
アリスはタロにも見えるように手紙を広げてやった。
破かれてしまうと困るので、タロが届かないように上の方でヒラヒラさせる。
「旦那様に会えなくてタロも寂しい?私も寂しいわ…」
アリスは手紙を胸に押し当てると、小さく呟いた。

仕事の方は、順調に進んでいる。
かねてからすすめていた鉄道事業はうまくいっていて、先日新しい線の開通式に行って来たばかりだ。
コラール家と共同で進めている貿易業も順調で、先日夜会で知り合ったテルルの商人とは良い取引も出来た。

(仕事さえあれば、それで良かったのに…)
ぽっかりと空いてしまった胸の寂しさを、埋めてくれる存在が今側にいない。
こんな気持ち、知らなくてよかったのに。
(…と言うか、私、チョロくない?)
アリスは自分の唇に指をやってそっと目を閉じた。
あのデートの夜にキスをしたクロードがしばらく顔を見せなくなって、アリスはもしかしたら彼が後悔しているのではないかと思っていた。
だったら、それをいいことに無かったことにしてしまえばいいとも思った。
あれは、雰囲気に浮かされてついしてしまったこと。
ちょっとした事故なのだと。
しかしクロードは次に顔を見せた時、何故来られなかったのか懇々と言い訳した。
その上で、再びアリスにキスをしたのだ。
あんなに無愛想で、堅物に見えていた騎士が。
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