花婿が差し替えられました
(非番の時にもう一度来よう)
そう思った時、ルイーズ王女がその髪飾りを指差した。
「ねぇ、それを見せて」
「はい、お待ちくださいませ」
店員がいそいそとケースを開け、髪飾りを取り出した。
クロードはその店員の手を呆然と見ている。
「ねぇクロード。付けてみて」
「……え?」
「何ボーッとしてるのよ。私の髪に付けてちょうだい」
「……はい」
クロードは店員から髪飾りを渡されると、そっとハーフアップされたルイーズの髪に付けてやった。
「似合う?」
「ええ…、はい」
「そう。じゃあこれ、買うわ。このまま付けて行くから」

その日から毎日、その髪飾りは王女の髪を飾り続けた。
田舎の町の宝飾品店で買った髪飾りは、いつも高級品しか身に付けない王女にとっては安物であるのに。
次に行ったブティックでは、白くてふかふかのショールが目に留まった。
今頃王都はかなり寒くなっているだろうから、アリスにこのショールを贈ってはどうだろうか、とクロードは考えた。
可愛らしいそれは、アリスの華奢な体を包んでくれることだろう。

しかしルイーズ王女は、そのショールもすぐに購入した。
王女はどうしてかクロードの目に留まる物に気付き、それを購入する。
クロードはもう、『無』になることに決めた。
ここ避寒地からアリスに土産を贈るのは、諦めた方が良さそうだ。
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