その恋、まぜるなキケン
自分が撃たれるつもりで真紘を腕の中に抱きしめた旭だったが、どこにも痛みを感じない。


何が起こったのかと後ろを振り向くと、綾人が頭から血を流して倒れていた。  


「嘘だろ……」


「やだ……綾人ッ!」


真紘と旭はすぐに綾人の元へ駆け寄った。


「大丈夫、大丈夫だからね綾人!」


真紘はまるで自分に言い聞かせるように綾人に話しかけながら出血箇所を押さえた。


「早く杉本晃を確保しろッ!」


「こちら1班。負傷者1名、至急救急要請を!」


後ろでは警察がバタバタと動いていた。


「……ラッキーだな俺。こんな所に看護師さんがいたんだから……」


綾人は今にも意識を失いそうな様子で真紘に優しく笑いかける。


真紘は綾人の血でどんどん真っ赤に染まっていく自分の白無垢を見て涙が止まらなかった。


「すみません!救急隊です!通してください!」


ほどなくして救急隊が到着し、綾人はストレッチャーに乗せられた。


「あなたもどこか怪我されてますか?」


「いえこれは彼の血です。私は付き添います」


真紘が救急隊について行こうとした時、旭に話しかける警察の声が聞こえ真紘は振り返った。


「織部旭。署まで同行してもらう」


「……はい。もちろんです」


旭はもちろん抵抗などせず、素直に警察の指示に従った。
 

「旭……」


真紘は心配そうな顔で旭の所へ来た。


「俺は大丈夫。真紘は刑事さんについててあげて」


旭は穏やかな表情をして安心させるように真紘の額に口づけた——。
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