その恋、まぜるなキケン
亮太に完全にしてやられた。


まさか真紘が聞いているとは思わなかったのだ。


部屋に残された2人の間には気まずい空気が流れる。


「今からでも刑事さんとヨリ戻してもらえよ……結婚して、一軒家住んで、子ども産んで。それが真紘の夢だっただろ?」


旭はさっき自分が言ったことをなかったことにして話を変えた。


「そうだけど、それは旭と叶えたかった夢だから……」


地獄(こっち)に引き摺り込みたくないんだって。もう絶対真紘のこと手放せなくなる……」


手放さなくていいんだよ——。


真紘はそう言いたかったが、でもやめた。


きっと旭にも譲れないことがあって、それは全部真紘のためだということが分かるから。


「……いいの。好きとかそういう言葉も、恋人っていうステータスもいらない。その代わり、もう何も言わずに私の前からいなくなったりしないって約束して……」


真紘は旭の手を掴んで言った。


彼は手元に目こそ向けたが、無理やり離すようなことはせず、真紘に握られるまま言った。


「後悔したその時には、もう手遅れだぞ……?」


真紘が大きく頷くと、旭が握った手を握り返してくれた気がした——。
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