【コンテスト作品】私の恋人の裏の顔は、最低な詐欺師でした。


 私はその後、拓斗の腕を振り払い「荷物まとめて、早くここから出ていってくれる?」と伝えた。

「頼む……頼むから、別れるだなんて言わないでくれ」

 そうやって縋られても、無理なものは無理なものだ。

「見苦しいよ、拓斗。全部あなたのせいじゃない」
 
「侑里……」

 泣きそうな顔で私を見る拓斗に、私は「そんな顔しないで。……私のこと愛してないなら、最初からそう言えばいいのに」と呟くように言った。

「……愛してるのは本当だ。本当に、侑里のことが大切なんだ」
 
 ……どこまでも調子がいい男。そんな男、こっちから捨ててやらないと。
 
「アンタとは、もっと早く別れておけば良かった」

「侑里……必ず時が来たら話すから」

「はあ?」

 時が来たら、ってなに? 意味が分からない。
 なにを話すって言うの? 

「浮気じゃないと言っても信じてもらえないのは、分かってる。 でも今は、何も言えないんだ。でも必ず、時が来たら話すって約束する」

「……そういうの、もういい」
 
 聞いてるこっちが見苦しくなる。余計に辛くなる。

「今、言う訳にはいかないんだ。もし言ったら俺は……」

 そこで口を閉ざす拓斗は、「本当にごめん」とキッチンに行ってしまった。
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