ー野に咲く花の冒険譚ー


「お前は何度か僕を可哀想だと言ったな」

「え,ええ。だって,何年もたった一人で生きてきたんでしょう? そのせいで,周りの人が今どんな気持ちなのか,疎いんでしょう?」



ココラティエは困ったように戸惑って,けれどするりと言葉を吐く。

なるほど,ココラティエは本心で話しているらしい。



「そうだな,必然とも言える。ただ,僕はそれのどこが可哀想なのか分からない。可哀想なのは寧ろ,いつだって僕の周りにいる人間だ」



思わぬ反論に,ココラティエは目を丸くした。



「だから少なくとも,ココラティエのような他者がそんな風に感じる必要はない」



気にせず続け,目を向ければ



「……今度はなんだ。何故そんな泣きそうな顔をする?」



僕はうるうると目を潤ませ,声を詰まらせ,仕舞いにはぽろぽろと泣き出したココラティエに,心底困惑した。
< 20 / 204 >

この作品をシェア

pagetop