4K幼馴染は溺愛がすぎる

第三章

「何のことって、、、あっくんが電話の向こうで女の人の声したって、、、」

「篤人?」

「うん、、それに!!!」

スンスンと夕の匂いを嗅いで改めて確信を持つ。

「ほら!絶対女物の香水!!!」

夕は自分の体の匂いを確かめながら

「あー、姉さんかも。今日こっち帰ってくるからって連れ回されてた。そんで酔っ払って歩けてなかったから抱えてタクシー乗せて帰ってきた。」

「菜摘ちゃん帰ってきてたの?!会いたかった!!」

菜摘ちゃんは3つ上で、妹のように可愛がってくれたので鈴音も大好きな人だ。

「はぁぁぁぁーー。なんだ菜摘ちゃんかよぉー!」

夕の肩に頭を埋めて、ポカポカと夕を叩く。
良かった。確認する前に帰らなくて。諦めなくて。
不安と緊張で強ばっていた体から一気に力が抜ける。
冷えきっている身体を温めるように、夕の温もりにピッタリとくっついていると、夕にかぷっと首元に噛みつかれる。

「ひゃ/// ちょっとなに?!」

するりと背中に手が入ってきて、夕が耳元で

「身体、まだ冷えてる。風呂入れるから待ってて」

と次は鈴音の頭にキスを落として、お風呂場の方へと歩いていく。
ヘナヘナ〜と力が抜けてソファーに横たわり毛布に顔を埋める。

「急にあんな色気有る声出すなよ〜〜///」

夕と仲直り出来たことが嬉しくて毛布に包まりながら嬉しさを噛み締めている時、ふと鈴音の頭にある言葉がよぎる。

"お前ほんと萎えるわ"

"その体どうにかなんねーの"

"汚ねーから服脱がないで"

そう、鈴音には誰にも話していない、話せていない事があった。
鈴音の父は酔ったら必ず手を挙げ、しかも毎回同じ場所だけを執拗に殴ってきていた。

痣が消えかけたと思ったらまた殴られて、、その繰り返し。
母は働かずにギャンブルばかりする父に代わって朝から晩まで働いていたのでこの事を知らなかった。

ある日、夕飯の支度を鈴音がしている時
酔った父がその日は殴るでもなく蹴るでもなく
ただニコニコと鈴音に近づいてきて

「おいお前、いい体してんだから脱げ」

そう言ったのだ。
鈴音は怖くて、気持ち悪くて、自分の部屋に逃げようとした時
それに腹を立てた父が、料理の為に沸かしていたお湯を鈴音の背中に投げてきた。

熱くて熱くて叫ぶ鈴音の上に跨って、先程まで火にかけていた鍋を鈴音のお腹に何度も当てては離しを繰り返して鈴音の反応を楽しむ父。

叫び声を聞いて、隣の部屋の人が通報してくれたおかげで、警察が駆けつけてくれ父は逮捕。
鈴音は病院へと運ばれた。

しかし背中とお腹の火傷は酷く、今でも痣が大きく残っている。

しばらくは、男の人と話すのも怖かった。
でも、もっと怖いかったのはみんなにその原因を知られる事だった。
幸い、父は外面だけは良かったためDVをしていた事を知っている人親は周りにはいなかった。
でも、もしこの事が噂にでもなれば
"父親に襲われそうになった子供"
そんな噂は鈴音が住んでいた田舎では一瞬で広まり皆からの目は汚いものを見る目に変わる。
だから、この事は幼なじみの誰にも話していない。
病院に迎えに来てくれた母だけに本当のことを話すと、母は泣きながら鈴音に謝り抱きしめてくれた。

その後、母は父と離婚。
元々、父とは離婚するつもりでお金を貯めていたようであの事を知った母は直ぐに離婚をして鈴音の学校の事もあり、同じ地元内ではあったが引越しもした。

それからは、必死に怖い気持ちを押し殺して普通に、いつも通りに振舞っていた。
今思うと、きっとみんな何かあった事には気づいていたのではないかと思う。
でも、無理に聞くことはせずにいつも通りに接してくれた事もあって何とか日々を過ごせていた。
そうするうちに、だんだんと慣れてきて父以外の男の人であれば大丈夫になっていた。
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