4K幼馴染は溺愛がすぎる

第七章

繋いでいた手にキュッと力が入ったので何かと振り返るとすずに言われたのは

"夕、結婚しよ"

の一言。
予想もしていなかった言葉に、頭が真っ白になる。

え、、、今、、すずなんて言った??

頭を追いつかせようと必死に思考を回す。

けっ、、こん、、、?

もちろん、夕自身もプロポーズを近々しようと色々考えていた。
しかし、まさかすずの方から言われるなんて考えてもいなかった。

昔からすずの事が好きだった。
人に興味が無いと言うことを理由にして自分から関わろうとしなかった俺をいつも輪の中に引っ張ってくれた。
すずと過ごしているうちに、自分はただ臆病なだけだと気づいた。
自分から飛び込んで拒絶されるくらいなら1人の方が楽だから。
だから、すずの事が好きでもずっと何も言えなかった。
今の関係が悪くなったり、壊れたりするくらいなら今の方がマシだと。
すずがそんな子でない事はよく知っていたはずのに。

でも中学の時に流れとはいえ、1度すずと付き合えた時は嬉しくて嬉しくてたまらなかった。なのに、それを表に出す事が恥ずかしくて、すずを前にすると緊張して、話すこと自体が減って結局別れてしまった。

後悔しても、足りなかった。
臆病で、中途半端な事しか出来ない自分が嫌で嫌で仕方なかった。

結局、その後もすずの事が好きそうな奴には嫉妬して片っ端から釘を刺すように隙を与えなかったし、大学で彼氏が出来ても応援する事なんて出来ずに勝手に1人でやさぐれただけだった。

変わりたいと思っていても、人は中々変われない。

しかしある日、すずが呑み会で酔った勢いでノリなのも分かっていたけど

"結婚してよ〜"

と言われた時、自分を変えたいなら今しかないと思った。
それからは、過去の後悔をもう一度繰り返さないように、自分の気持ちを素直に行動にするようにした。

あんなに今まで出来なかった事のはずが、やってみると案外簡単でむしろ、気持ちを伝えられる事がこんなにも幸せな事なんだと気づけた。

色々あったものの、すずと付き合えてからは幸せ以外の何ものでもなく、日を重ねる毎にすずへの気持ちは深く大きくなるばかりだった。

最近では同棲にも慣れてきて、すずの父の件も収まった為そろそろ良いのでは??と思いながらも臆病な自分が顔を出し、夜に情けないとは思いながらも、試すようにそれとなくすずの反応を見てみると、嫌そうではなく、照れているすずを見て安心し本格的に予定を立てていたところだった。
付き合うきっかけも、付き合う時もすずからだった為、結婚する時は自分から伝えようと心に決めていた。

その矢先に、すずからのプロポーズ。
と言ってもすずの様子を見る限り、すず自身も驚いている様子。

「え?うそ、私今、、え!?うそ!?いや、嘘じゃないんだけど、あの、、そのえっと、、、」

視線をキョロキョロさせながら喋るすずは、相変わらず可愛くて、何よりすずの気持ちが嬉しくてガバッとすずを抱き上げて、これでもかと力いっぱい抱きしめてキスをする。

「すず、俺と結婚してくれるの?」

そう聞くと

「夕は私で本当にいいの?」

なんて少し不安そうな顔をして決まりきった事を聞いてくる。

「すず以外考えられないよ」

額をくっつけて、そう答えると

「夕、泣いてるの?」

とすずの手が夕の頬をなぞる。
そう言われて、初めて自分が泣いている事に気がついた。

「本当だ。ダサいから見ないでよ。」

そう言うと、クスクスと笑いながら

「夕はいつもかっこいいよ」

と優しく笑ってくれる世界で1番愛しい人。

もう一度、ギューっと抱きしめて首に顔を埋めるようにして大きく息を吐く。

「すず、ありがとう、すっごい嬉しい。愛してるよ。」

顔を赤くするすずに、愛し足りないというようにもう一度キスをしてひとまず帰る事にした。
< 57 / 79 >

この作品をシェア

pagetop