真実の愛は嘘で守って・・・。

【吸血鬼令嬢と人間の従者】:Side楓

「っつ・・・」

いつもより深く牙が突き立てられ、思わず声が漏れてしまう。

「ごめん、痛かった?」

透き通った湖のような碧色の瞳が、不安そうにこちらを見上げるので、「平気。それより垂れてる」と誘導してやれば、再び視線を流れ出す血に向け、1滴も零さないよう綺麗に舐めとっていく。

「優李」

「ん?」

「最近、血飲む量増えてない?」

「そうかな?」

「足りないなら首から吸う?」

その言葉にピタリと動きを止め、俺の手から口を離す。

「いらない。食事としての吸血じゃないんだし、今ので全然足りてるよ」

そう言って俺の手に自分の手を重ね牙の痕を消す。

優李が言ったとおり、ヴァンパイアは生きていくだけなら普通の人間と同じ食事で問題ない。
それでも血を吸うのは、人間にはない身体能力や治癒力、特殊能力を保持するためだ。

「ならいいけど」

「楓は心配性だな」

「別に。俺、食事の準備してくるからそれまでに制服着替えといて」

そう言って優李の部屋を後にして、炊事場へ向かう。

心配とかそんなんじゃない。
あの提案はただの自分の欲のためだ。
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