リナリアの花が散る頃に。

水族館デート



準備を終え、ある程度朝方になった頃。


「よし、じゃあさやか行こうか」


「うん」


椿の声は少し興奮気味で、多少早口になっていた。なんだか、愛おしい。


拠点を後にした。
水族館への行き道は、ただ無言でひたすら歩いた。途中でコンビニに寄り、マスクと帽子を二人分買って店を出る。


「さやか、めちゃくちゃ似合ってるよ」


「嬉しいような、嬉しくないような⋯⋯」


そんな会話を最後に、水族館に着いてしまった。もっと話せばよかったな。


「よし、どこからまわりたい?」


初めての光景に私は泣きそうになった。
こんなに綺麗な世界がこの世にあったのかと思うたびに、私は生きてて良かったと実感する。


「あ!あそこにパンフレットあるよ!ちょっと私取ってくる!」


「人多いから気をつけてね」


それにしても⋯⋯⋯。


パンフレットっていくつ持っていけばいいんだ?私はそんな疑問と共に手にすくえるくらいのパンフレットを持って椿の元へ急ぐ。


「⋯⋯⋯え!?さやか、パンフレットは二個で大丈夫だよっ⋯」


え、じゃあ私今すごく迷惑なことを⋯⋯。


「ちょ、ちょっと!パンフレット急いで置いてくるー!」


人も多く、箱に入れ直すのに時間を少し取られてしまった。


「ご、ごめんなさい⋯⋯」


「ふはははっ!ちょ、ちょっと、さやかって面白いねっ⋯!」


「じ、じゃあ行こっか」

迷惑を掛けたはずなのに笑ってくれている。
何故だろう。
まぁ細かいことは気にせず、今は水族館を堪能したかった。


「う、うん!行こ!」
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