リナリアの花が散る頃に。


「僕達の家出した理由、聞いてください」


「全て話そう」耳打ちされた。
こんなことになってしまうのは想定していた。いつか来ることだって分かっていた。


「私が悪いんです。椿を連れ回してしまったから。」


「僕らが聞きたいのは理由だよ、話してくれるんだよね?お二人さん」


はぁっと息を吐いて、はぁっと息を吸って乱れた呼吸を整える。
そして、意を決して、言葉を選んで、早口になりながらも警察の人に思いをぶつける。

「私、家庭内暴力を受けてるらしくて。いままで外にも出たことがなかったんです。でも、やっと普通の生活ができたんですよ」


息を吸うのを忘れるように続ける。


「それでも、受けたことには変わりなくてこの先続くのもわかってる。そんな世界から椿が手を差し伸べてくれたんです。だから、どうか椿を守ってやってください」


息が乱れてしまう。体力もないためますます酷い。このままじゃ倒れるかもな、私。


椿に体を預ける。


「ごめんね、何も出来なくて」


「ううん、椿は私に沢山幸せをくれたよほんとにありがとう」


徐々に呼吸が整った頃、私たちは


警察官とともに署に向かった。


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