ギター弾きの天使とデュエットを ~言葉を話さぬ彼に惹かれて、二人は同じ夢を見る~
 チャコはこの場所に来るといつだってジャンとの想い出が蘇ってくる。その場所に恵と由香と三人で立っているのは随分と不思議な気分だ。

 チャコは今までこの場所のことを二人に話したことはないが、今日はこの場所でジャンとの想い出話がしたかった。


「実はね、ここでジャンと出会ったんだよ」


 恵も由香もとても驚いている。初めて話したからそれも当然だろう。


「そっか……天使との想い出の場所なんだね」
「うん。ここでいっぱいジャンのギター聴いて、いっぱい一緒に歌った。ギター弾くならやっぱりここかなーって思って連れてきた」
「チャコ……」


 恵が優しくチャコの頭を撫でて、由香がそっと手を繋いでくれた。二人の優しさに大切な想い出がまた一つ増えて、チャコは自然とその顔に笑みを浮かべていた。


「演奏するから、あそこ座ろ?」


 チャコを中心にして並んで座る。まだチャコが演奏できる曲は多くないけれど、一番自信のある曲をチョイスして、二人に弾いて、歌って聴かせた。


「チャコ、すごい! ホントに弾けてるじゃん!」
「まだまだだよ」
「私もすごいと思うよ。チャコの努力の結果だね」


 本当にまだまだなのだが、二人に褒めてもらえればやはり嬉しい。だが、ジャンはこれとは比べ物にならないくらい上手かったなーと彼の演奏を思いだした。

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