ギター弾きの天使とデュエットを ~言葉を話さぬ彼に惹かれて、二人は同じ夢を見る~
「ギター習ってるならわかると思うけど、音階ってドレミファソラシじゃなくて、アルファベット表記のもあるでしょ?」
「あるね」


 由香の言う通り、今のチャコにはそれがわかる。


「ラレラドをアルファベットにすると『ADAC』になるの」
「うん?」


 『ADAC』になる理屈はわかっても、『ADAC』がなんなのかはさっぱりわからない。


「チャコの名字は安達でしょ?」
「うん」
「それをアルファベット表記にしたら『ADACHI』。四文字目まで一致してる。で、たぶんだけど、残りの『HI』をハイ、つまり高いって意味で高い音で表したんだと思う」
「うん?」


 なんとなくわかったが、頭の中でそれを組み立てていると頭が痛くなってきそうだった。


「もうちょっとだから頑張ってついてきて」
「う、うん」
「同じ理屈でミソラをアルファベットにすると『EGA』。そのままローマ字読みしたら、『えが』なんだけど、最後に指で丸を作ったんならそれがつくはず」
「『えがまる』?」


 『えがまる』なんて名前聞いたことないが、チャコが知らないだけでそういう名字があるのだろうか、なんてそんなことを考えていたら、すぐさま由香に否定された。


「『えがまる』はさすがに聞いたことないかな。たぶん、『えがわ』じゃないかな。丸は輪っかでしょ? だから『えがわ』」
「えがわ……」

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