ギター弾きの天使とデュエットを ~言葉を話さぬ彼に惹かれて、二人は同じ夢を見る~
 ジャンのおかげで緊張が解け、チャコはリラックスした状態で本番に臨めた。それにいざ始まってしまえば、あとは楽しい気持ちのほうが勝っていた。



「続いては、ギター&ボーカルデュオ『河川敷のハーモニー』のお二人です」


 司会に紹介され、ジャンとともに「よろしくお願いします」とお辞儀をする。二人はユニット名を『河川敷のハーモニー』とし、各自は『チャコ』と『ジャン』という名前で活動している。


「なんとお二人はご夫婦なんですよね。SNSでお二人の仲睦まじい様子がとても話題になっていますね」
「はい。反響の大きさに驚いています。応援の言葉もたくさんいただいて、夫婦共々大変励みになっています」


 ジャンはあの天使の微笑みを浮かべながら受けごたえしている。これは女性ファンが増えそうだなとチャコはちょっとだけ心配になった。


「今も微笑みあわれていて、本当に仲がよくていらっしゃいますね。さて、今日披露いただく『君ともう一度』の『君』とはジャンさんであると公言されていますが、どのような想いで作曲されたのでしょうか?」
「私たちは一時期離れていた時間がありました。そのときにもう一度彼に会えるように、もう一度彼と音楽ができるようにと願ってこの曲を作りました」


 リハーサル通りの流れで進むから、チャコも詰まることなく答えられる。


「では、チャコさんの願いが叶ったということですね」
「はい」
「本当によかったですね。今日はその『君ともう一度』をお二人のデュエットの特別バージョンでお送りいただきます。それではお二人ともスタンバイお願いします」



 二人はギターを持って指定の位置に着く。司会の合図が入ったあと、二人は視線で合図を送りあい、その曲を演奏しはじめた。

 微笑み、見つめあい、音を重ねる。やはり二人一緒にいれば、いつだって二人の音楽を奏でられた。この音楽が大事な人にも、今はまだ見知らぬ誰かにも届けばいいなとチャコは願った。



「『河川敷のハーモニー』のお二人でした。ありがとうございました」


 これでようやく出番が終わったと思ったチャコだが、その直後にチャコの知らない展開が待ち受けていた。


「はい、実はですね、なんとここで、チャコさんには内緒でジャンさんからのサプライズがあるということです。ジャンさん、お願いします」


 そんな話はまったく聞いていなかったのでどうしたらいいのかと戸惑う。ジャンが微笑んでくれるからそちらを見つめていれば、ジャンが驚きの内容を口にした。


「はい。今日はこれまでの感謝を込めて、チャコに歌を贈りたいと思います。チャコと離れて一人でいたときにチャコを想って書いた曲です。タイトルは『チャコ』。聴いてください」
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