ギター弾きの天使とデュエットを ~言葉を話さぬ彼に惹かれて、二人は同じ夢を見る~
「しげさーん、こんばんはー」


 夜の時間に移り変わろうとするころ、三人組の男性が店内に入ってきた。


「おー、今日は揃ってご登場か」
「タイミングよく会ったもんで」
「チャコちゃん、よかったな。今日は聴けるぞ」


 しげさんの言葉にチャコが首を傾げると同時に、入店した男性たちも同様に首を傾げた。


「この子、ぼうずのギターのファンでな、ぼうずがセッションしてるとこ聴きたがってるんだよ。ちょっと早いけど落ち着いたらやってもらえるか?」
「おー! それはもちろん」


 どうやらこの人たちがセッションしてくれる人らしい。ついに念願の演奏が聴けるのだ。チャコは彼らに期待のまなざしを送りながら、準備が整うのを待った。披露してくれるのはアイルランド音楽らしい。ジャンもギターを手に彼らに混ざっている。しげさんも打楽器で参戦するようだ。


 一瞬の静寂が訪れたあと、店内に彼らの音が響き渡った。バイオリンと縦笛から軽やかなメロディーが流れてくる。チャコはアイルランド音楽を知らない。当然今の曲も初めて聴くが、その陽気で楽しげな雰囲気に、チャコはあっという間にその虜になった。何より演奏している人たちから楽しそうな空気が伝わってきて、チャコの気分も自然と高揚する。気づけば曲に合わせて手拍子を叩いていた。
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