ギター弾きの天使とデュエットを ~言葉を話さぬ彼に惹かれて、二人は同じ夢を見る~
 曲が終われば、皆互いに大きな拍手を送っていた。


「ジャン、最高だよ! こんなに楽しいの初めて! しげさん、皆さん、ありがとうございます! とっても楽しかったです!」
「チャコちゃんもダンスよかったよ! 一緒に楽しんでくれたから、おじさんたちもすごく楽しかったよ。ありがとうね」


 店内にはこれ以上ないほどの楽しい空気が満ちていた。



 外に目を向ければ、すでに日が落ちて暗くなっている。チャコはもっと余韻に浸っていたかったが、そろそろ帰らねばならない。名残惜しくはあったが、また来ると告げてジャンと二人で店をあとにした。




 この日もジャンはいつもの河川敷まで見送ってくれた。


「ジャン、今日もありがとう。すっごくすっごく楽しかった! また行こうね!」


 チャコが満面の笑みを浮かべてそう言えば、ジャンは柔らかく微笑み、そっとチャコの頭を撫でてから、軽く手を振り去っていった。


「もう……ジャンはたらしすぎる……」


 チャコは顔を手で覆って両足をドタドタと踏み鳴らした。



 今日は随分と濃い一日だった。いろんなことがチャコを刺激して、ずっと高揚した状態からなかなか戻ってこられない。家に帰ってベッドに入ってもそれは治まらなくて、チャコが眠りについたのは明け方になってからだった。
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