ギター弾きの天使とデュエットを ~言葉を話さぬ彼に惹かれて、二人は同じ夢を見る~
 どのくらい聴いていたのだろう。辺りを見れば徐々に日が落ちようとしているところだった。いつまで弾いているのだろうと思えば、タイミングよく立ち上がる少年。彼はそのまま土手を上り、帰っていこうとする。


「え、ちょっと待って!」


 チャコは慌てて呼び止めた。だが、少年はそれに応えずそのまま歩いていく。


「え!? ねー、ちょっと待ってって!」


 その二回目の呼び止めで少年は振り返った。周囲を見渡したあと、チャコのほうを向いて首を傾げている。


「明日も来る?」


 その問いかけに、少年はにこっと微笑むと今度こそ振り返らずに帰ってしまった。


「えー、今のどっち……」


 その日、チャコはなかなか眠れなかった。少年のギターの音がこびりついて離れない。チャコはその心をすっかり鷲掴みにされていた。


(もっと聴きたいな……)
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