ギター弾きの天使とデュエットを ~言葉を話さぬ彼に惹かれて、二人は同じ夢を見る~
「そっか……だめ、か……」


 チャコがそうこぼせば、繋いでいた手を強く握りしめられた。振ったのはジャンのはずなのに、まるで離れていくチャコを引き留めようとするかのようだった。


 振られた今、チャコはどうすべきなのかわからない。もうジャンの近くにいないほうがいいのかもしれないとも思うが、ジャンはそれを望んでいないような気がする。チャコだってできることならジャンのそばにいたい。だからチャコは素直に問うてみた。


「もうジャンのそばにいちゃだめ?」


 ジャンは強く強く首を横に振った。そんなふうにジャンが強く否定するのは初めてだった。


「一緒にいてもいいの?」


 今度は縦に強く振っている。明らかな肯定だった。


「私ジャンが好きだよ? 好きなままでいい?」


 ジャンは今にも泣きだしそうな表情をしながらも、はっきりと頷いてみせた。


「わかった。じゃあ、一緒にいるね。それでずっとジャンのこと好きでいる。またジャンに告白する!」


 チャコが笑ってそう告げれば、ジャンの手の平がチャコの両頬を包んだ。ジャンはまだ少し泣きそうな表情をしているが、それでも今度はちゃんと笑っている。きっとそれでいいと言ってくれていると思ったが、このときばかりは確証が欲しかった。


「それでもいい?」


 ジャンに問えば、先ほどと同じようにはっきりと頷いてくれた。チャコは、今はもうそれで十分だと思った。
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