ギター弾きの天使とデュエットを ~言葉を話さぬ彼に惹かれて、二人は同じ夢を見る~
 ギターをしまいはじめたジャンに、今日はもうお別れかと淋しい気持ちが湧いてくる。

 その気持ちを押し込めて立ち上がれば、同じく立ち上がったジャンに両手首をつかまれた。つい先日のジャンの行動が思い起こされて心拍数が上がる。ジャンはその期待を裏切らず、またチャコの手を引いてジャンの腰に回させた。


 前回のそれで多少耐性がついてはいるが、それでもこういうことに不慣れなチャコには刺激が強い。チャコはまた強く身体に力が入った状態で固まってしまった。


「もう……ジャン、これドキドキしすぎちゃう」


 小声で愚痴ってみても、ジャンの手は緩まない。

 しばらく身を固くしていたが、それも疲れてきて、徐々に身体の力を抜いていった。そうすれば、前回同様ジャンの片手が離れて、チャコを優しく撫ではじめる。それが始まるとチャコはもう動けない。身を任せるしかなくなってしまう。


「ジャンのいじわる……ジャン大好き」


 思わずこぼした言葉を肯定するかのように、ジャンにきゅっと抱きついた。一瞬チャコを撫でる手が止まったが、チャコを宥めるように軽くポンポンと触れてから、またすぐにそれは再開された。



 あの告白以来、もはやこれは恋人関係と言っていいのではないかと思うくらい、ジャンは甘えさせてくれる。チャコが好きだとこぼせば、ジャンは嬉しそうな顔をしてそれを受け入れてくれる。

 だからチャコの想いは色褪せることなどなくて、日に日に色濃くなっていくばかりだった。
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