あの日、桜のキミに恋をした
駅から徒歩すぐの所にその店はある。


どうやら日本各地に店舗があるらしい。


この店舗はガラス張りのアトリエで、とても表参道らしいオシャレな造りだ。


中では既に何組もテーブルごとに作業をしていた。


俺たちが予約していたのはペアリング制作のコースだったけど、婚約指輪や結婚指輪のコースもあるようで、周りは俺たちよりも大人が多かった気がする。


素材はシルバーと決まっていて、あとはリング幅やデザイン、形や仕上げを選ぶことができる。


俺たちは2.5ミリの甲丸(こうまる)(リングの表面が丸みを帯びている感じ)をチョイスして、オプションでリングの内側にお互いのイニシャルを入れることにした。


「みなさん結構お相手のリングを作られるカップルさんが多いですが、どうされますか?」


俺たちは顔を見合わせて頷いた。


「「じゃあそうします!」」


ペンチみたいな道具でリングの形を作って、ハンマーで叩いたり磨いたり。


一つ一つはそれほど難しい作業ではないのに、自分が作った物を由奈が着けると思うと緊張感が高まった。


たまにお互いのリングを見せ合いながら、2人とも集中して作業を進める。


スタッフの人がその様子を撮影してくれていて、最後にはその写真も貰えるらしい。


だいたい1時間半くらいで作業は終わり、完成したリングは箱に入れてもらってその場で受け取れた。
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