冷徹ホテル王の最上愛 ~天涯孤独だったのに一途な恋情で娶られました~
まるでホテルマンように静かにこちらにやってきて優雅な仕草でサイドテーブルに置いた。

「そろそろ起こそうと思ってたんだ。朝食ができたから」

「これ、私に……?」
 
日奈子は目を見開いた。
 
トレーの上に並ぶ朝食がホテル九条東京の朝食メニューそのものだ。

「ああ、コンシェルジュに頼んで材料を手配してもらった」

「材料をって、じゃあ……、宗くんが作ったの?」
 
朝食だからそうこったものが並んでいるわけではない。でもきつね色の美味しそうなパンケーキとふわふわのスクランブルエッグまである。宗一郎が作ったというのは驚きだ。
 
九条家には専属のシェフがいたから、日奈子は宗一郎が料理をするところを見たことがない。

「宗くん、料理できたのね……」
 
パンケーキとスクランブルエッグだけでなく、ベビーリーフのサラダやカットフルーツなどが見栄えよく並んでいる。

このままレストランで提供してもおかしくはないように思えるくらいだった。

「入社時にすべての部署で修業したからな。もちろん俺の料理をお客さまに出すことはできないから、俺が作っていたのはコックたちに出す賄いだけど。シェフには朝食はお客さまに出してもいいレベルに達したと言われたよ」
 
そう言って彼は、ベッドに腰掛けて日奈子を引き寄せこめかみにキスをした。

「今朝はこのままここで朝ごはんだ」

「ここで?」
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