冷徹ホテル王の最上愛 ~天涯孤独だったのに一途な恋情で娶られました~
プロポーズ
テラコッタの床と白い壁、大きさの違う色とりどりの皿が飾られている店内に、陽気なカンツォーネが流れている。

アットホームな雰囲気のイタリアンレストランで、日奈子は同僚たちとさっき自己紹介をしあったばかりの男性たちと食事を囲んでいる。
 
莉子に誘われていた飲み会である。

異業種交流会的なもの、というコンセプトの通り、さまざまな職業の彼らはビシッとしたスーツに身を包んだビジネスマンだった。

はじめはどこか遠慮がちだった場もメインが運ばれてくる頃には打ち解けて、思い思いの相手と雑談に興じている。

が、日奈子の緊張はまだ解けなかった。
 
あまり気が進まなかったこの飲み会に参加することにしたのは、ロッカールームで聞いた宗一郎と美鈴の熱愛疑惑がきっかけである。
 
もしふたりが本当に付き合っているとしたら、これ以上ないくらいお似合いの組み合わせだ。

容姿や社会的地位だけでなく、家柄も釣り合っているのだから。
 
もちろん宗一郎に恋人ができたことはこれまでも何度かある。

本人から聞いたわけではないが、彼の両親やまだ健在だった母親から漏れ聞く話によると、結婚は想定していない付き合いだったようだ。
 
彼もどこか冷めていたように思う。

本当は恋人と過ごすべき休みの日を日奈子の家庭教師のためにキャンセルすることもあったくらいなのだから。
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