冷徹ホテル王の最上愛 ~天涯孤独だったのに一途な恋情で娶られました~
……一週間前の想定外のプロポーズは、かなりまずい伝え方だったと自覚している。宗一郎にとっての人生最大の大失態だ。
 
普段は常に冷静沈着であることを心掛け、巨大な企業を率いるリーダーとして、間違った判断をしないよう、感情の起伏は抑えているというのに。
 
そのいつもの自分ならあり得ない失敗の原因は、あの時彼女が口にした『天涯孤独』という言葉だった。

誰よりも慈しみ大切にしてきた彼女の、あまりにも痛ましいひと言が、宗一郎の胸を刺し冷静さを奪っていった。
 
結婚という明るい未来を語っているはずなのに、まるでなにかから逃げるように自暴自棄になっているような日奈子を見ているうちに、気がついたら思いを告げてしまっていた。
 
結果、彼女を混乱させるという今まで一番避けてきた事態に陥ってしまっている。三年間の忍耐と努力が水の泡になってしまったのだ。
 
——だがこうなったら、もう後に引くわけにいかなかった。
 
深いため息をついて目を閉じると、久しく目にしていない宗一郎が大好きな日奈子の笑顔が浮かびあがる。

彼女を幸せにできるのは、この世界に自分しかいないのだという確かな思いが胸に広がった。
 
——絶対にあの笑顔を取り戻す。この手で彼女を幸せにする。
 
宗一郎はそう決意して、ゆっくりと目を開いた。
< 54 / 201 >

この作品をシェア

pagetop