冷徹ホテル王の最上愛 ~天涯孤独だったのに一途な恋情で娶られました~
がちゃりとドアを開けると、宗一郎が渋い表情になった。

「いきなり開けるな。ちゃんと相手を確認してからにしろ」

「でもさっきモニターで確認したじゃない」

「俺以外にも中に入れる住人がいるだろう」
 
もはやそのまま説教しそうな勢いである。日奈子は慌てて招き入れた。

「と、とりあえず、中に入って」
 
ふたり狭いキッチン兼廊下を抜けて、部屋へ入る。

「お茶、淹れるね。宗くんは座ってて」
 
彼は座卓の前にベッドを背にして座った。今日はスーツではなく普段着だった。

麦茶を淹れたコップを座卓に置いて日奈子も隣に座り、問いかけた。

「宗くん、どうして来たの?」
 
送り届けるために彼がマンションへ来るのはしょっちゅうだが、休みの日に来たことはない。しかも午前中に来るなんて引っ越しを手伝ってもらって以来のことだ。

「俺も今日は休みなんだよ。メッセージに入れただろう?」
 
宗一郎が答えるが、日奈子はそれで納得できなかった。

知りたいのは、どうして休みの日にわざわざ来たのかということだ。日奈子の休みはともかく彼の方は常に過密スケジュールなのだ。

まる一日休みだというのは珍しいことに違いない。それなのに、そんな貴重な日の朝早くにやってくるなんて。

「……なにかあったの?」
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