冷徹ホテル王の最上愛 ~天涯孤独だったのに一途な恋情で娶られました~
日奈子の変化
ホテル九条本社ビルの打ち合わせ室で、宗一郎は企画課の社員と美鈴を交えて打ち合わせをしている。
内容はオープン後の美鈴の広報活動についてである。

「ホテル九条宮古島に関しては、格式高いというイメージは一旦おいておき、地元の素晴らしい文化と自然をお客さまが感じられるということを優先させたいと思っております」
 
企画課の社員がそう言って机の上にたくさんの資料を広げた。

「ガラス工芸や宮古上布といった地元の工芸品を作ることができる体験企画をホテル内のロビーで定期的に企画して、悪天候でも宮古島を楽しんでいただけるようにしようと考えておりまして」

「海外からの観光客は喜びそうね。作った物を持ち帰れるなら記念にもなるし」
 
美鈴が相槌を打った。

「はい。ですから美鈴さんにはオープン前に一度現地へ足を運んでいただき、その様子を……」
 
順調に進む打ち合わせに、宗一郎はとりあえず安堵する。レセプションに対するメディアや市場の反応もまずまずだ。なにごともなければ、想定していたよりもいいスタートが切れるだろう。
 
副社長から社長に昇格すべく父からの権限移譲も順調に進んでいる。
 
亡くなった祖母から厳命された、ホテル九条を国内一の座へ戻すことにも成功した。

副社長に就任してから全力疾走してきたが、まずは次期リーダーとしての役割をひとつ成功させたといえるだろう。

「当分の計画は以上です。スケジュールについては、美鈴さんのエージェントを通させていただきます。なにかご質問は?」

「とくにはありません。この通り進めてくださって結構よ」

社員の言葉に美鈴が答えて打ち合わせは終了する。
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