Good day ! 2
第八章 野中の告白
「ご搭乗の皆様。本日も日本ウイング航空をご利用頂き誠にありがとうございます。機長の野中でございます。当機は現在順調に飛行を続けており、羽田空港には定刻の18時に到着予定でございます。着陸の際には、美しい東京の夕暮れをご覧頂けると思います」

この便には彩乃が乗っている。
今、このアナウンスを聞いてくれていると思うと、何を話そうかと野中は少し考え込む。

「私達は仕事柄、日々空を飛んでおりますが、1つとして同じフライトはございません。本日ご搭乗の皆様におかれましても、このフライトが思い出深いものとなりますよう、心より願っております。皆様を安全に羽田空港までお送り致しますので、この先もどうぞごゆっくり空の旅をお楽しみください」

アナウンスを終えると、隣の副操縦士が、へえーと呟く。

「なんだ?」
「いえ、なんだかいつもの野中さんと違うなと思って。今日のPAはお笑いゼロなんですね?」
「何を言う。俺はいつだって真面目100%だぞ」
「あはは!それはないですよ」

確かに今日の自分はいつもとは違う。

あれから何度も彩乃とメールをやり取りするようになり、予定を聞いたところ、今日の自分の便に乗ることが分かった。

せっかくだからと、このあとディナーに誘ってある。

そこでロンドンのお土産を渡して、想いを伝えられたら…。

気持ちがはやるが、今は操縦に集中しなければ。

野中は気を引きしめて、前を見据えた。
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