Good day ! 2
「えっ!これは?」

ジュエリーボックスの中に掛けられていたのは、煌めくサファイアのネックレス。

彩乃は息を呑んで言葉を失う。

「そのネックレスも、気に入って頂けると嬉しいのですが…」

野中の言葉に、彩乃は慌てて首を振る。

「いえ、これは頂けません」
「なぜですか?」
「それは、だって…。単なるお土産で、こんな高価なネックレスは頂けません」

野中はじっと一点を見据えてから、思い切って顔を上げた。

「では、私の恋人としてなら受け取って頂けますか?」
「え?それは、どういう…」

彩乃の顔に困惑の色が広がる。

「彩乃さん、私とおつき合いして頂けませんか?」

ハッとしたように、彩乃は目を大きくさせた。

「あなたと初めて会った時、年甲斐もなく一目惚れしてしまいました。メールのやり取りをするうちに、どんどんあなたに惹かれていきました。毎日あなたのことが頭から離れず、会いたくてたまらなくなりました。やっと今、こうしてあなたと一緒に食事が出来て、この時間がもっともっと続けばいいのにと先程からずっと心の中で願っていました」

彩乃の瞳が涙で潤んでいく。

「私の願いを叶えて頂けませんか?これからも、ずっとあなたと一緒にいたいという、私の願いを」

とうとう彩乃の目から涙がこぼれ落ちた。

「私も、あの日突然私の前に現れたかっこいいあなたに一目惚れしました。でもきっと叶わない、夢の世界の出来事だと自分に言い聞かせていました。だってあなたはパイロットなんですもの。現実的に好きになってはいけないと、どこかで気持ちを抑え込んでいました。でも今、こうして…」

気持ちが高ぶって上手く呼吸が出来ずに、彩乃は大きく息を吸う。

「こんなに素敵なジュエリーボックスをくださって、しかもオルゴールは私の大好きな曲…。もう魔法にかけられたように夢見心地で信じられません。これが夢だって分かったら、私はあなたの言葉にすぐに頷くのに…」

そんな彩乃に、野中は優しく笑いかける。

「では、夢でもいいから頷いてくれませんか?そうすれば私はあなたを、ずっとこのまま夢見心地にさせてみせます」

彩乃はクスッと笑みを漏らす。

「ずっと、一生?」
「はい。ずっと、一生」
「私、ボーッとしたままですよ?」
「はい。ボーッと夢見ててください」

ふふっと彩乃は楽しそうに笑う。

「時々起こしてくださいね?現実のあなたともちゃんとお話したいから」
「分かりました。とびきり面白い話をして、大笑いさせてみせます」
「それは楽しみ!」

彩乃は満面の笑みを浮かべる。
野中はそっとネックレスを手に取ると、彩乃に微笑んだ。

彩乃は髪を手で束ねて、きれいなうなじを野中に向ける。

滑らかな肌の上を滑らせるように、野中が彩乃の胸にネックレスを着ける。

キラキラと輝くネックレスに手をやり、柔らかく微笑む彩乃に、野中も優しい笑顔を向けた。
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