朝1番に福と富と寿を起こして
それからバドミントンとシャボン玉だけではなく、まさかの・・・



「無理無理無理・・・!!
ちょっとは手加減してよ!!!」



「お前25だろ!!?
34のオッサンに何言ってんだよ!!」



本気の鬼ごっこまでして、“永遠”に私の鬼になっている。



「年齢はそうだけど私は女だし!!
朝人は男じゃん!!
ちょっとは手加減して捕まえさせてよ!!」



息切れしながら数メートル先に立つ朝人に叫ぶと、朝人が小さく笑いながら私のことを真っ直ぐと見てきた。



「じゃあ、少しだけ手加減する。
だから絶対に追い掛けて捕まえろよ?
俺のこと、追い掛けて捕まえろよ?」



そう言われ・・・



鬼ごっこのことだけど、朝人からそう言われて・・・。



苦しいのはきっと息切れしているからというだけではなく、この胸が切ないくらいに苦しくなった。



「うん、追い掛ける・・・!!
ちゃんと追い掛けるから掴まえさせてよ!!」



泣きそうになりながらも叫ぶと、朝人は私のことをバカにしたような顔で見てきた。



その顔が凄くムカついた。
凄く凄くムカついた。



私では掴まえさせてくれない。



朝人は私に掴まえさせてくれない。



全然全然掴まえさせてくれない。



「ちょっと・・・!!
手加減は・・・!?」



「手加減してるだろ!!」



朝人がめちゃくちゃ嬉しそうに笑いながら、後ろ向きや横向きで走っている。
これでも速すぎて全然追い付かない。



全然追い付かない。



私は朝人に全然追い付けない。



手加減されているのに全然追い付くことが出来ない。



「千寿子!!」



めちゃくちゃ嬉しそうに笑い続ける朝人が私の名前を呼んだ。



「このままずっと鬼ごっこしてたいんだけど!!!」



「私は嫌だよ・・・!!
掴まえさせてよ・・・!!
ちょっとくらい・・・1回くらい掴まえさせてよ・・・!!」



泣きそうになりながら叫ぶと、朝人が私のことをバカにしたような顔で見詰め・・・



スピードを少しだけ落とした。



それを見て、私は残りの力全てを出しきって朝人に向かって走った。



あと少しで朝人を掴まえられる。



そう思いながら、後ろ向きで走っている朝人の胸に右手を伸ばした。



そして、その右手が朝人の胸につく・・・



鬼ごっこだけどやっと朝人を掴まえられる。



そう思った瞬間・・・



「・・・ゎっ!!」



朝人が急に止まり、私は勢い良く朝人の胸に衝突した。



かと思ったら、その衝撃と同時に朝人が私のことを抱き留めた。



そして・・・



「これ、私が掴まってない・・・?」



朝人に私が抱き締められている状況になっていた。
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