朝1番に福と富と寿を起こして
オフィスビルの1階に着いてからまた走り出し、スマホで朝人に連絡をしようとした。
朝人が帰ってしばらく経っているだろうから。



そう思っていたのに、いた。



朝人が、いた。



いつかと同じように、カヤのお姉ちゃんと話している朝人がいた。



そしてそのいつかと同じように、カヤのお姉ちゃんは私のことを見て・・・やっぱり鋭く目を光らせた。



“普通”ではなかった。



カヤもそうだけど、カヤのお姉ちゃんも“普通”ではない。
そんなことはうちの会社の社員なら誰もが知っている。



カヤのお姉ちゃんは嬉しそうな顔で私に笑い掛け、そして朝人を見上げた。
それからエレベーターの方に歩いてきて、私に会釈をし・・・



「この会社には私がいるからね。
カヤより力が弱いけど、それでも私にも国光の血が流れてる。
気持ち悪いけど私も協力はする。
気持ち悪いけど私にとっても兄みたいな存在の人だから。
気持ち悪いけど。」



そんな言葉には思わず笑いながらお辞儀をして、出入口に歩き出している朝人に向かって走った。



そしてその勢いのまま、朝人の腕に自分の腕を絡めた。



「朝人!!!」



朝人の名前を呼びながら。



そして、私は爆笑した。



「ねぇ、そんな嫌な顔しないでよ!!!」



私を見下ろして“ゲッ”みたいな顔になった朝人に文句を言う。



「それはするだろ!!
お前何なんだよ、いい加減にしろよな!?」



朝人は叫んだ後に周りを確認し、それから小声になった。



「毎朝毎朝“もう来るな”って言ってるのに毎朝毎朝俺の部屋に来るとかもはや虐めだろ。
男女逆だったら即問題になるやつだぞ?
仕事で関わってる相手のことを虐めてくんなよ。」



「だって、朝人に朝ご飯作らなきゃだし。
私のご飯を食べないとパワーがつかないんでしょ?」



「俺にもう飯は作らないって言ってたのはお前だろ?」



「うん、だから“朝1番”では作ってないよ?」



「朝1番だろ、5時半に来てるんだから。
俺の下半身にもパワーがつく飯作りやがって。」



「ムラムラしちゃう?」



「それはするだろ。」



「朝人って私のことが好きなの?」



「何の確認だよ、これ以上虐めてくんなよ。」



「いいから答えて、好きなの?」



聞いた私に朝人は物凄く怒った顔になった。



そして・・・



「うるせーよ。」



それだけを言って、私の腕を振りほどいて走って出ていってしまった。
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