吸って愛して、骨の髄まで

頭を撫でる優しい手つきも、抱きしめる腕に込められた力強さも…私を弱らせていく気がした。



「っ…や、めて…優しく、しないでっ…!」



抵抗しようと声を振り絞っても、どうしたって敵わない。



顔を上げれば、愛おしいものを見るように私を見る彼がそこにいて。



「…頑張ったね、薫子。今日この日まで、生きていてくれてありがとう。今日からは僕が、薫子を愛すよ。いなくなりたいなんて思わなくなるくらい、大切にさせて欲しい」



「っぅ…ふ、っ…」



嘘とは到底思えないほどに優しい甘さで、私を溶かした。



凍りついた心がゆっくり解れていくような…そんな感覚がした。



「私…怖いの…っ。嫌、なのっ…」



「うん」



「この血が、怖い…っ」



「…大丈夫。僕が吸ってあげるから。嫌な記憶も怖い気持ちも…ぜんぶ、僕が塗り替えてあげる」



「っ…ほんと?」



恐怖と不安を吐き出して、彼の言葉にすがってしまう。



たとえそれが、私をダメにするものだとしても…。



「契約を交わそう。きっと、薫子のためになるはずだから」



「っ、うん…」



頷くことしか出来なかった。
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