吸って愛して、骨の髄まで

「……さようなら」



そのまま瓶ごと持ち上げて、飲み込もうとしたその時───



「うん、さようなら」



「えぇ、さようなら───…って、え?」



どこからともなく聞こえた、抑揚のない声。



「なーんてね。それ、飲んでもサヨナラできないよ」



すぐさま後ろを振り向き、驚愕した。



「2年A組美崎薫子さん、どうもはじめまして。薫子って呼んでもいいかな?」



この世の人間とは思えないほどに美しい少年が、笑みを浮かべて私の名を口にした。



「なっ…んで、ここに人が…?それに、な、なんで私の名前を知って…っ?」



動揺……なんて、そんな可愛いものじゃない。



困惑、焦り、戸惑い、恐怖…。



そして、まだ自分がこの世界に存在しているという底無しの絶望。



それら全てがぐちゃぐちゃに混ざりあって、上手く言葉にいい表すことが難しい。



「お、お願いっ…このことは誰にも言わないで…!!お願い、だからっ…」



一言で言うならば、私はみっともなく取り乱していた。



嘘よ…今まで誰にも合わなかったのに、今日に限って…っ。
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