吸って愛して、骨の髄まで

解かれる


私の両親はどちらも、エリート街道を突っ走ってきたような人達だった。



小さい頃から成績優秀だったらしく、真面目な性格と努力を買われて有名企業に入社。



その後父は専務取締役、母は常務取締役にまで上り詰めた後に私を授かった。



それは二人が昇格して間もない頃。



これからどう上手く働くかで今後の出世にも関わる…そんな大事な時期だったという。



母は育児休業を余儀なくされ、父だけが働くこととなった。



…多分、そこから二人は変わってしまったのだと思う。



そもそも父と母は、恋愛結婚ではなくお見合いを経て結婚に至った。



二人の間に愛はなく、互いがいることによって生まれる利益だけを求めていた。



…もうその時点で私には理解ができない。



とにかく、祖母たちに「まだ結婚はしないのか」と言われるのを避けるために、上手くやっているはずだったのだけど。



『だから言ったのよ!私は子供なんか欲しくないって…!』



幼かった私の耳に入ってきたあの言葉は、今でも覚えてる。



泣き崩れる母の姿を冷たく見下ろす父。
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