鬼社長の迸る視線に今夜も甘く絆される
彼女を脱がしていいのは、俺だけなんだよっ

入社して三か月が経過した。
早いものであっという間に師走に入り、今年も残すところあと僅か。
今年は転職を機にこれまで培って来たスキルを活かそうと、前職よりも仕事に打ち込んでいる。

「成海部長、フレームワーク(ステム開発をする上で必要な機能がまとまったもの骨組み)見て貰ってもいいですか?」
「あっ、はい。これ終わったらでいいですか?」
「はい。休憩行って来ます」
「いってらっしゃい」

派遣のSEの葛本(くずもと)未希(みき)さん 三十六歳が会釈して席を外した。
仕事はかなり出来るが、既婚者で定時で退社したいからと、勤務形態は派遣希望。

結婚……。
恋愛を夢見ることもとうに諦め早数年。
恋愛したいとすら考えることもなくなった。

仕事さえ充実していればそれでいいい。
このスキルさえあれば、どこに行っても食いはぐれることはない。

「部長」
「……はい」

国分さんが声をかけて来た。
スタッフは担当案件のミーティングに出ていたり、社屋内のPCの調子が悪いから見て欲しいなど、デスク外での作業も多く、今現在デスクに残っているのは私と国分さんのみ。

「社長とお付き合いしてるんですか?」
「………え?」
「私、先日見たんですよね。社長の車に乗っている部長を。信号待ちしている車内で仲良さそうに話してるお二人を」
「……」
「別に誰かにバラそうとか、そういうんじゃないんですけど。最近、社長がここに通ってる理由はそれなのかな?って」
「……」

どうしよう。
何て答えていいのか、分からない。
実際、社長と交際しているわけでもないし、口説かれているわけでもない。
ただ単に、個人的な専属契約をしているだけなんだけど。

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